「生活福祉金貸付制度」という借り入れ方法があることをご存じでしょうか。国の機関である厚生労働省が管轄するこの制度は、制度が複雑で知名度も低いことから利用者は多くありません。しかし実は金利がゼロもしくはかなりの低金利で借金ができるお得な制度でもあります。生活福祉金のあらましや具体的な審査についてお伝えします。
生活福祉金を知ろう
まずは生活福祉金の概要やその種類、実際にどれくらい借りられるのかについて見ていきましょう。
生活福祉金とは?
前述の通り厚労省の管轄の元、各都道府県と市町村ごとに組織された民間団体である社会福祉協議会が行う融資制度です。民間団体ですが社会福祉法に基づいて設置された団体で、生活福祉金は低所得者、障害者、高齢者を対象とした公的なセーフティネットの役割を持っています。
生活福祉金の1番の特徴は金利の低さです。連帯保証人を立てれば無利子で、保証人が立てられなくても原則年1.5%でお金を借りられます。低金利の融資で社会的弱者を経済的に支え、かつ福祉の促進を図ることを目的としています。
生活福祉金の主な対象
対象者は次の三者に限られています。まず住民税が非課税となる程度の収入、または生活保護基準の1.7から2倍以下の収入で他からの借入が望めない「低所得者」、そして障害者手帳などの交付を受けた「障害者」、最後に65歳以上の「高齢者」が福祉金制度を利用できる対象者です。
審査は厳しいの?
保証人がいれば金利はゼロ、いなくても原則1.5%でお金が借りられる制度というと、審査がかなり厳しいのではと思うかもしれません。実は生活福祉金は、対象者でありかつ後述する資金使途や限度額の範囲内であれば、借り入れまでのフローを1つ1つ踏んでいくことで利用可能です。しかし審査が通らない例外もあります。例えばすでに複数の借金がある場合は審査に通りません。生活福祉金もあくまで借金であるため、返済能力があることが貸付けの条件となっているのです。
どんな種類の貸付けがある?
生活福祉金は資金使途に応じていくつか種類があります。利用の多い3つの資金を詳しくお伝えします。
生活を立て直すためにお金が必要な場合:「生活支援費」
困窮した生活をひとまず建て直すことを希望する方向けの借り入れです。1人世帯の場合は月に15万円、2人以上の世帯の場合は月20万円が限度額です。利用できる期間は原則3ヵ月で最長1年としていますが、3回までの延長も認められています。また返済についてですが、最後に借りたときから6ヵ月の据置期間を置くことが可能です。そしてこの据置期間終了から10年以内に返済しなければならないとしています。
住居を借りるためのお金が必要な場合:「住宅入居費」
敷金や礼金が必要な賃貸契約を結ぶ際に必要なお金にあてられます。限度額は40万円で、生活支援費と同様に6ヵ月の据置期間が置けます。また返済期間も10年以内であるため、40万円満額借りたとしても保証人を立てて利息をゼロとすれば、毎月の支払いは最低3,300円程度で済みます。
学校の授業費を払うためにお金が必要な場合:「教育支援費」
低所得世帯者が高校や大学などに進学する際に利用できます。どこに進学するかによって、月に35,000円から65,000円と融資金の違いがあります。場合によっては限度額の1.5倍までの金額を借りることが可能で、卒業後6ヵ月以内の据置期間を置いたあとに20年以内で返済しなければなりません。
その他にも…
上記以外にも滞納している公共料金支払いに利用できる「一時生活再建費」、障害者用の自動車購入資金に利用できる「福祉費」、「緊急小口資金」や「就学支度費」など資金使途に応じて数種類の福祉金があります。ご自身で使いたい資金がどの福祉金に当たるか気になる方は、各地域の社会福祉協議会のホームページなどで確認すると良いでしょう。
審査について
すでに借金があるなどの場合をのぞき、原則フロー通りに進めば生活福祉金の審査は通るとお伝えしましたが、具体的な審査の流れを見ていきましょう。
貸付審査にはどれくらいの期間が必要?
生活福祉金を申し込んで実際に手元にお金が入る期間として、早くて3週間、遅くて1ヵ月半とされています。民間のローンは最短1日で融資可能なものも多いですが、生活福祉金は以下6つの手順を踏まなければなりません。
①お住まいの市町村の社会福祉協議会や民生員へ相談
②市町村の社会福祉協議会へ借り入れ申込書と必要書類を提出
③市町村と都道府県の社会福祉協議会で申込内容の確認と審査
④審査を通過した場合、貸付決定通知書の受け取り
⑤都道府県社会福祉協議会へ借用書を送付
⑥生活福祉金が交付
また福祉金の中でも「生活支援費」については、この6つの手順の前に「自立相談支援機関へ相談をする」という手順も踏まなければなりません。最初に社会福祉協議会は民間団体と説明しましたが、そのほとんどの財源は国や都道府県の予算から出ています。公的な支援だからこそ時間をかけて審査を行っているのです。
審査をする上で必要なもの
生活福祉金の種類は様々ですが、どれを利用するにしても必ず必要なものが「健康保険証か住民票の写し」と「世帯の状況が明らかになる書類」です。また原則通りに保証人を立てて利用するときは、「連帯保証人の資力が明らかになる書類」も必要です。どのような書類を準備するかは、利用する福祉金の種類やお住まいの地域の社会福祉協議会によって異なります。最初に申し込んだ時点である程度必要な書類は伝えられるかと思いますが、スムーズに審査をしてもらうためにも早いうちから準備しておくと良いでしょう。
まとめ
制度や審査の複雑さから民間で借り入れするよりも少々時間がかかる生活福祉金。しかし国が管轄する公的な支援制度であることからこそ、その金利や返済額の負担の軽さはどこにも負けません。お金が必要なときは生活福祉金の利用も検討してはいかがでしょうか。